京都北白川大原邸「三楽苑(さんらくえん)」の秋

 

                  

                         

 

京都北白川に私が50年間ご維持させていただいている、三楽苑(さんらくえん)」があります。

三楽苑は、倉敷にて事業を多く手掛けられた大原孫三郎様の別邸として、私の父の代(昭和10年代)に庭園をおつくりしたもので、その後大原総一郎様、大原謙一郎様、大原家の皆様のお住まいとなりました。

さまざまな著名人も訪れられた庭園であり、その中には1959年来日公演をされた、カラヤン及びウィーンフィルハーモニー弦楽団や20世紀を代表する世界的巨匠のひとりである、版画家の棟方志功氏等の姿もありました。

 

大原家の皆様は、自然を愛し、慈しみ、そして大切にされる御精神をお持ちであり、私どもも自然というものの素材を素直に生かし、その自然の中で人が楽しまれ、本来の人の心に戻れる庭づくりをさせていただきました。

この庭が出来て80年。現在では回りで失われた自然を求めて、たくさんの自然物がこの庭に参加してきています。そこには絶えず小鳥たちの群れ遊ぶ姿やさえずり、昆虫たちの遊び飛び交う姿があります。また初夏の池はモリアオガエルの卵がぶらさがり、池にはタガメやゲンゴロウや水かまきりが泳いでいます。

そしてそこには春にはつくしや庭一面に咲く白い花(ハウストニア)、すみれや椿、しゃくなげといった花々が庭を飾り、夏からは桔梗やりんどう、おみなえし、萩やすすきなど季節の草花が咲き乱れる庭でもあります。

                 

そして、今庭園は秋の紅葉の時期を迎えています。

普段は杉、檜、松といった林の中に存在しているもみじは、一年の殆どは他の緑に同化していますが、秋10月ごろからは徐々に色を変化させてきます。書院前から見える池回りのもみじから美しく変化し始め、秋が深まるごとにヒノキや杉林の中の紅葉が深くなってまいります。もみじの紅葉は庭の東側から西側へと徐々に移ってきます。三楽苑のもみじは、すべてが京都の「いろはもみじ」で構成されています。全体の美しさもありますが、木の頂上から一枚一枚の葉が順番に紅葉を進めていく時、葉の細やかないろはもみじは緑から黄色、赤といったグラデーションも非常に美しいものです。

紅葉の波が庭全体に広がる11月のこの時期の一瞬だけ、もみじが三楽苑の庭の主役となります。そうしたもみじが美しく輝く庭が三楽苑の晩秋の佇まいです。

11代 小川治兵衞