庭を自然に貸すということ(その2)

                     

 

庭園には樹木や石だけでなく、水も使用いたします。植治ではその水も自然の川や疏水を使用していることがほとんどです。7代目以降の多くの庭には琵琶湖疏水を使った池や川をおつくりしましたが、それはただ「留まる水」ではありません。「流れのある水」、つまり一時この庭にお借りしている「生きた水」であったのです。歴代の治兵衛はその水をいろんな風に変化させて、自然に溶け込むよう庭に使っていきました。

 

また私共ではそれと併せて芝生の空間もつくっています。芝生というのは日光を好みますので、上に大きな木を植えることはいたしません。庭に池や芝生の空間をおつくりするということは、その上に木がありませんので、結果明るい空間を創り出し、大変見晴らしがよくなったのです。

そうしますと、京都は後ろに東山が控えておりますので、庭の向こうに山が見えてくるわけです。人はこれを「借景庭園」と呼ばれますが、私はそうは思っていないんです。こちらの庭が自然の形態をとっているからこそ、向こうの山がこの自然に同化してくるんじゃないかと考えているのです。

(その3に続く)

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